第4話 死徒達の叫び
「血……」
「血が必要ですね」
「――――」
そこは上も下もない世界。
そこはときのない世界。
―――永遠の世界。
「そもそも何故このようなことになったのだ」
ワラキアの夜―――いや、格好と状況からするにここはズェピア・エルトナム・オベローンと呼んだほうがいいかもしれない。
「私たちは形は違えど永遠をいきるものだからではないでしょうか?」
アカシャの蛇と呼ばれる転生無限者がそれに答える。
「蛇よ。わたしも確かに永遠に近い時を生き生命の根源への到達を目指しはしたが、それは全て己の内にのみ。わたしがこのような場所に来るいわれはない」
混沌、ネロ=カオスは不快げに声を洩らす。
「わたしに文句を言われましても」
「そんなことより血だ!! わたしは現象として形をなしていない状況であれば血を必要としないが、これでは常に形をなしてしまっている。血が必要だ」
「ここは永遠の世界らしいので血がなくても死ぬことはないんじゃないですか?」
「カット……、カットカット、カットカットカットカットカットカットカットォォォオオオォーーーー!! 必要かどうかではない! ただ短にわたしは血が飲みたいのだ!」
「さっきと言ってること変わってますけど」
「蛇よ。お前は現世にまだ残っている死者や死徒から今はまだ血の供給があるからいいのだろうが、わたしと祟りにはそれがない。我が666の獣たちももはや飢えの限界だ」
「そう言われましても――――!?」
「どうしかしたかね、アカシャの蛇」
「わたしへの血の供給も絶たれた……。誰かがわたしの死者を滅ぼしたらしい」
「これで全員後には退けぬということか」
「そもそもどうしてときの無い世界なのに血が欲しいのだ!」
「だから、必要ではなくてただたんに我々が血液依存症になってるだけですよ。吸わなくても滅びないけれど欲しい。煙草のようなものかと」
「カット……、カットカット、カットカットカットカットカットカットカットォォォオオオォーーーー!! 吸血鬼が禁血なんぞ冗談にもならんぞ!!」
「うるさいぞ祟り……」
「二人とも、見なさい!! 現世が見えますよ!!」
丁度計ったかのようなタイミングで3人の前に現世が映し出される。
「おお!? あれはシオンではないか! うむ。制服姿も似合っているな」
「あ、アルクェイドオォォオォォ!!」
その瞬間、ロアの髪が黒く染まり、勘違いヴィジュアル系VERへと変化する。
「蛇までHETARE化してしまったか」
「アルクェイドまで制服かよ!! こいつぁいい」
「そ、そんなことよりここにわたしがいることを伝えねば! おーい!! シオン、わたしだ! お前のパパはここにいるぞ!」
「アルク!! わたしはここだ!! わたしだーーー!!」
「くそう。気づかないな」
当たり前である。
「せめてシオンが血を吸ってくれればわたしにも供給されるのだが」
「シエルーーー!! 今こそ血を吸うのだ!!」
「醜いものだな」
といいつつ、少し羨ましそうなネロ=カオス。
「ヌゥゥゥゥ! アルクのやろう志貴の前で頬を赤らめやがって! 志貴め、帰ったら殺してやる!」
「何ぃ!? 魔眼の少年よ! シオンはお前にほれているのだ! シオン以外を選ぶなど許さんぞ!!」
「長森……」
そこに今丁度飛ばされてきた折原浩平が出現する。
「って、なんだお前ら!? 情緒もクソもねえな!」
「――――食え」
ネロ=カオスの中から志貴との戦闘でもあらわれなかったような凶悪な獣が浩平に向かう。
「抜け駆けは許さん!! バッドニュースライ」
「公平に誰が吸うか決めようではないか」
「蛇が吸った後ならば残った肉体をわたしが食しても良いのだがね。祟りは根こそぎ吸うから骨と皮しか残らぬ」
「なるほど。二人でワラキアをやってしまえばいいということか」
「汚いぞ貴様ら!!」
「お前ら一体なんなんだ?」
「餌は黙っていろ!!」
「餌ぁ!?」
「ここは公平にじゃんけんで決めるとしよう」
「混沌!?」
「ネロ=カオスともあろうものが随分平和的なものを持ってきたな」
「わたしは666の生命があるので、当然666の獣もじゃんけんに参加する」
「どこが公平じゃボケェ!!」
「もうダメだ! ガマンできん。早いもの勝ちだ!!」
ズェピアが浩平に向かってダッシュをかける。
「抜け駆けは許さんぞ!」
「やべえ! 初代じゃなくこのVERじゃ戦闘力に差がありすぎる!」
3人が浩平に群がろうとしたそのとき、浩平の身体が消える。
「「「な!?」」」
浩平は242日と23時間と49分ほど予定より早く現世へ帰っていった。
「消えた……」
「なんか現世のほうで女と抱きあってるぞ」
「ふぬぅぅぅぅぅぅ!!」
「俺に当たるな、混沌!」
「ふむ。なんか諦めがついたらなれてきたぞ、わたしは」
そういってズェピアは座りこみ現世を見る。
「ここでシオンの成長を見守るのも悪くない」
「ふむ、ここでアルクの肢体を見守るのも悪くない」
「まあ、わたしは生命の根源への道を模索するとするか」
こうして3人は幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし
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